
自分が抱いている信念、そして自分に語りかけているストーリーは、自分の中で世界の現実を形づくっています。
それが間違っていたら、それに立脚する習慣も意思決定も不適切なものとなり、望ましい成果をもたらさず、自分自身を苦しめることになります。
柔軟な精神は、現実世界についての情報が増えることに自らを変化させ、現実を解釈するためのより良い方法を獲得していきます。
人間として成長し続けるためには、現実についての固定的な思い込みを疑う、柔軟な精神を身につける必要があります。
自分を動かす「信念」を再インストールする

「信念」は「現実」ではない

本書では、精神のことを「意味づけマシン」と呼び、定着したストーリーや信念を「ハードウェア」と呼んでいます。
コンピューターのハードウェアのようなものです。
人間のハードウェアの多くは7歳になる前に埋め込まれます。
そして、意識してそれを選ぶ人はいません。
権威者・社会や文化・教育システム・子供ながらの観察が、幼少期の僕たちにそうした信念を吹き込むのです。
しかし、いつまでもそれを疑わずに保持し続けていると、人生に有害な影響があります。
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信念は、自分がいかに大切な存在か、自分に何ができるか、社会での役割は何かなどを教える大切なものです。
ところがその信念が、自分を貶めて箍をはめるようなものであったら、人間としての可能性も制限されてしまいます。
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問題は、僕たちはそんな信念をまるで現実のように感じてしまうところにあります。
なぜ現実のように感じられるかというと、その信念が間違っていると気づくまでは、それが現実だからです。
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救いは、コンピューターのハードウェアをアップグレードできるように、信念もその間違いに気づいたときにアップグレードできることです。
意識工学で「人間2.0」に進化する

意識工学の第1ステップは「私の信念は私自身ではない」と認識することです。
それは過去にインストールされたハードウェアにすぎず、アップグレードすることも交換することもできます。
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神経に可塑性があるおかげで、人間はネガティブで自己制限的な信念を、もっと役に立つ前向きな信念と取り替えることができます。
信念が変われば、人生も変わります。
なぜなら、人が世界をどう経験するかを規定するのが信念だからです。
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自分を抑圧する信念を取り替えるのは、「人間1.0」から「人間2.0」に進化するための重要な条件ですが、容易なことではありません。
僕たちは信念が自分を制約しているとも知らず、後生大事にそれを抱え込んでいます。
それはあまりにもリアルなので、その存在に気づくこともないほどです。
僕たちにとって、世界は信念が教える通りに存在しています。
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信念を書き換える方法として、催眠療法や瞑想が推奨されています。
これらは意識を覚醒させて、間違った信念の存在に気づかせて、それを意図的に変えることを可能にしてくれる方法です。
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ハイパフォーマーたちが自己を制限する信念を変えることを重視するのは、現実を正しく反映していようといまいと、信念はやがて現実になると知っているからです。
クライアントに自らの自己制限的な信念に気づかせ、それを正せるように助けることは、ライフコーチやビジネスコーチの大切な仕事です。
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たとえば、大事なプレゼンの前に縁起の良いことがあったから、プレゼンは絶対成功すると確信している人がいるとします。
ここで、そんな因果関係が実際に存在するかどうかは問題ではありません。
その存在を信じることで自信を強めた人は実際に立派なプレゼンをやってのけるでしょう。
確信版のプラシーボ効果のようなものです。
「楽観的な期待」が成功率を大幅に上げる

ポジティブな信念は、文字どおり成功をもたらします。
成功物語を自らに語り聞かせることで、脳はそれを信じ、それにのっとって行動します。
逆もまたしかりです。
マーティン・セリグマン博士とペンシルベニア大学の同僚たちは、のべ100万人以上を対象とした30年の調査に基づいて、楽観的な期待が達成の重要な予測指標になることを発見しました。
売れると信じている営業担当者たちは、悲観的な対照グループより55%も成功率が高かったのです。
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信念は、努力の結果も左右します。
だから、最大限に能力を発揮するためにはネガティブな信念を捨て去ることが大切です。
エネルギーと時間のかなりの部分を、自分より大きく考える人たちと過ごすことがオススメです。
自分の可能性についてのストーリーを書き直すことができるからです。
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意識工学の第2ステップは、生活を形づくっているシステム、すなわち習慣をアップグレードすることです。
習慣というのは、スマホのアプリのようなものです。
習慣とは、食事や運動や睡眠など、1日24時間を形成しているパターンのことです。
なので、大きなことを成し遂げた人々から成功の原動力となった習慣を学ぶことは、自分自身の成功に繋がります。
惰性的な反応をやめて「脳の配線」を変える

人間の脳には、2,000年前の世界でならば役に立ったパフォーマンスを発揮させる習慣がプログラムされています。
僕たちは、脳に埋め込まれた時代遅れのプログラムを捨てて最善のアウトプットを追求することもできますし、今日の現実に合わせて脳をプログラムし直すこともできるのです。
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そのためにはまず最初に、脳のデフォルトの設定を理解しなければなりません。
人間の本能は、これまでやってきたのと同じことを繰り返そうとします。
それは、日常生活では都合の良いことです。
あれこれ考えないで同じ道をドライブして出勤できるのは、そのおかげです。
しかし、絶えず無意識に行動していては、革新的な思考は生まれてきません。
習慣が焼きついてしまった配線を「固定配線」(ハードワイヤリング)と呼びます。
他方、「自在配線」(ライブワイヤリング)は成長と変化をもたらすもので、神経可塑性の「可塑性」の部分です。
脳は「いまの自分」を維持させたがる

固定配線に頼って行動しているときも、脳は絶えず変化しています。
問題は、変化の方向です。
レストランでお気に入りの席がふさがっていたら腹を立てるような、情けない習慣に支配されているデフォルトモードなら、その脳は「下方配線」(ダウンワイヤリング)されています。
加齢とともに下方配線することは多いのですが、可能性に心を開き、もっと良くなろうと意図するなら「上方配線」(アップワイヤリング)も可能です。
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パフォーマンスを高めたければ、下方配線ではなく上方配線に時間を使うことです。
ところが、脳の本能はエネルギーを節約するために下方配線を選びがちです。
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脳はこれまでと同じことを繰り返したがり、自分自身に、今のままでいて欲しがっています。
多くの人にとって、昨日と同じ今日が居心地よく感じられ、恐れも不安も少ないのはそのためです。
要するに、脳は、変化を恐れる臆病で愚かな器官なのです。
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上方配線するためには努力が必要で、リスクが伴います。
脳を居心地の良いデフォルト状態から無理にでも引き剥がして、人間としての成長をサポートする意図的な選択へと向かわせなくてはなりません。
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そのために推奨されている方法は、無意識の反応を回避してより良い方向へと向かえる瞬間を発見することです。
マインドフルネスの専門家は、そういう瞬間のことを「メタ・モーメント」と呼びます。
きっかけ(トリガー)と反応(レスポンス)の間の一瞬の時間のことです。
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たとえば、何か旗が立つことを言われたとき、いつも通り怒る下方配線ではなく、間を置いて、なぜ腹が立つのかを考え、望ましい反応を選ぶ上方配線を心がけます。
練習しだいでメタ・モーメントを見つけることも習慣化できます。
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脳も信念も現実も変えられるというのは、ワクワクすることです。
僕たちは自分がどんな人間かを自分で決め、自分自身にとっての真実を選ぶことができます。
それが、ゲームチェンジャーというものです。
次回予告

HACK05▶︎超速学習法で「流動性知能」を高める