本要約 鍼灸接骨院

【1−7】紛糾する経営会議

紛糾する経営会議

オフィス。

その日の経営会議は紛糾していた。

社長である鹿島修人はこう言った。

鹿島修人
僕はこの事業を続けたい。

すかさずCFOの梁哲聖が反論する。

社長。ですが、この事業は毎年3億円もの赤字。それに今期は、主要KPIもすべて達成できていない。このままでは投資家に説明がつかないですよ。
梁哲聖

は国内最難関の大学を卒業し、ハーバード大学で修士を取り、米系投資銀行出身のザ・エリートだ。

シュートは折れない。

続けた。

鹿島修人
僕にとって投資家なんてどうでもいい。いちばん重要なのは、お客さんがどれくらい熱中しているか、だ。それにきっと長い目でみたら投資家の人もわかってくれるはずだ。

CEO鹿島修人と、CFO梁哲聖

この2人はまさに直感派と理論派。

経営会議に挙がるレベルのテーマでは、議論はいつも対立する。

シュートが譲らなければ、も譲らない。

は続けた。

しかし、今期に入り、すでに利益の下方修正。それに先日、週刊誌に載った、社長自らの発言により、株価は年初から10%も下落しています。既存事業も苦しい中、今、新しい投資なんてするべきではない。これは経営のセオリーからすると当然ですよ。
梁哲聖
鹿島修人
いや、違う。
はあ?何が違うんです?
梁哲聖
鹿島修人
違うんだ、梁。こういう苦しいときこそ、投資を続けないといけない。会社には必ず波がある。株価が下がった程度で新しいことを止めたら、それこそ会社は終わる。

実際、GORILLAのようなテクノロジーカンパニーは、「未来への期待値」で株価が大きく変動する。

5年前に上場してから最初の2年の株価は、この「未来への投資」で高い評価を得ていた。

しかし、ここ数年は変わってきている。

梁哲聖が続ける。

背に腹は変えられませんよ、社長。このままいくと、3年待たずにキャッシュが底をつく。これまでは鹿島修人の神通力で市場に優遇されてきた。だが、今はその神通力が落ちている。メインバンクからの追加融資も難しい中、このままでは本当に倒産しますよ。
梁哲聖
鹿島修人
だから、それは僕がなんとかする。

はあ・・・。

どこからか、ため息が聞こえた。

そのため息には、「またかよ」「そろそろ現実見ろよ」という意味が含まれていたのかもしれない。

それもそのはずだった。

かつては、天才起業家と呼ばれた鹿島修人だったが、ここ3年、連続で事業に失敗していた。

3年前に立ち上げた新規事業は、わずか1年で数億円の赤字を出し、撤退。

続いて立ち上げた事業も、鳴かず飛ばず。

赤字を垂れ流す状態だった。

そしてそのたびにシュートは、「僕がなんとかする」と言ってきたのだった。

だが、現実は、なんとかなっていない。

したがって彼の「なんとかする」という言葉は、信頼のデフレを起こしていたのだ。

これは梁哲聖に対してだけではなかった。

かつてはシュートを慕っていた上層部の多くも、今は彼の才能に懐疑的になっていたのだった。

だが、事実、2人の意見はどちらも完全には間違っていない。

の言う通り、会社は今苦しい。

まず立て直すべきは既存事業かもしれない。

一方で、これまで新規事業はすべて社長である鹿島修人の一本足打法で戦ってきた。

この会社で、もしシュートが新しいことを止めたとしたら、新規事業は止まる。

つまり、エンジンが止まるのだ。

「どちらの話にも一理ある」

少なくとも、経営会議のメンバーはそう感じていた。

そして、鹿島修人がもし失脚した場合、次に社長になるのはだ。

だから、誰もが保身を賭け、どっちつかずなのだ。

スタンスをとった発言をしないのだ。

企業が停滞し始めるとき、事業のあるべき姿ではなく、組織の政治に目が向かう。

長い沈黙が続いた後、折衷派の小川取締役はこう言った。

小川大輔
では、明確な期限を決めるのはどうでしょう?
明確な期限?
梁哲聖
小川大輔
そうです。2年以内に黒字化できなければ、完全撤退。これでどうでしょう?

が、すかさず修正する。

2年は長すぎる。1年。これが限界だ。
梁哲聖

1年で黒字化?

そんなことができるのだろうか?

皆がシュートのほうを見ている。

彼は大きく深呼吸をしたあと、一言だけ言った。

鹿島修人
わかった。そうしよう。

すかさず、他の役員が続く。

「でも、もし、うまくいかなかったらどうするんです?なんて投資家に説明するんですか?これだけ経営会議で反対されて、リスクもあるのにやって・・・・」

梁哲聖に目配せを送る。

おそらく、彼への忖度だろう。

だが、は反応しない。

手を組み、何も答えず、じっと前を見つめている。

鹿島修人は目をつぶっている。

そして、言葉を吐いた。

鹿島修人
そのときは、僕の進退も考える。

皆がわずかにざわついた。

小川取締役が言う。

ほ、本気ですか?
小川大輔
鹿島修人
ああ、僕の覚悟だ。必ず復活させてみせる。

つまり、これが彼のラストチャンスになる、こういうことだった。

次回

【1ー8】天才が会社を去るとき。シュートの覚悟。

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