
ストレッチもヨガも、必ずしも目に見える変化を身体にもたらすわけではありませんが、動き方やパフォーマンスを変えることはできます。
回復力はハイパフォーマンスの鍵を握る要素ですが、ストレッチやヨガで心身の調和をはかることは、回復力を高める有効な方法です。
いつでも使える「最強の集中力」をつかむ

肉体のエリートであるアメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズを退役したマーク・ディヴァインは、現在、戦闘員集団を指揮するのではなく、彼を戦場で際立たせた強靭な意志・集中力・タフさ・平常心の保ち方を、ビジネスパーソンに伝授しています。
心を静め、感情のコントロールを取り戻す

マークによれば、人生を変える大きな助けになったのがアシュタンガ・ヨガの練習でした。
マークがこのヨガを気に入ったのは、ひとつには武術の訓練を思い出させたからです。
一連の動作の流れをひとつずつ覚え、だんだん高度な連続動作に進んでいく体系は、段位が上がるごとに新しい帯を締められる武術に似ています。
達成志向と攻撃性は、この流派の性格を端的に表現しています。
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大いに励んだマークでしたが、同じ動きを何度も繰り返したせいで、軍隊式の筋肉トレーニングやクロスフィットで同じ動きを繰り返したのと同じような、酷使による損傷が起こりました。
反復運動は不適切な動作パターンを固定して身体を傷つけることがあります。
彼は、思考の明晰さや身体の柔軟性など、ヨガの利点は気に入っていましたが、負傷のせいで熱意を失ってしまいました。
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その当時、マークは予備役将校でしたが、2004年にイラクへ派遣されることになりました。
そんなとき、軍事企業ブラックウォーターとの契約でイラクに赴いていた友人のスティーヴン・スコット・ヘルヴェンストンら4人が、ファルージャを車両で移動中に、反乱軍の待ち伏せ攻撃で非業の死を遂げました。
マークは脳裏に浮かぶ殺害のイメージに悩まされ、自分も間もなくそんな危険地帯に足を踏み入れるのだと強く意識し始めました。
任地に発つ数日前には、テロリスト集団がペンシルベニア出身の電波塔修理員ニック・バーグを斬首する動画を投稿するという出来事もありました。
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マークはバグダッドに向かう軍用輸送機の機内で、人生でそれまで体験したことがないほど神経質になっていました。
いつ何が起こってもおかしくないという強烈な意識とともに、心身が厳戒態勢に入っていました。
じっとしていれず、機内の後部でヨガを始めました。
心が静まり、感情のコントロールを取り戻しました。
輸送機が機首をイラクの砂漠へ向けた頃には、かなり気分が良くなりました。
バグダッドに着陸したとき、完全な無我の境地にはほど遠かったものの、平静で「いま・ここ」に集中し、次に起こることへの準備ができていました。
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次の瞬間、それがとても役立ったことを思い知る事態が起こりました。
輸送機から降りて15分と経たないうちに、「来るぞー!!」という叫び声が聞こえ、それに続いてヒューッと風を切る音ともに迫撃砲が飛来し、400メートルほど離れた場所に着弾したのでした。
「上等だ、待っていろよ!」と、マークは言いました。
「癒しのポーズ」と「攻撃的なポーズ」を組み合わせる

2人のシールズ隊員が車で迎えに来て、マークを兵営に送ってくれました。
兵舎はサダム・フセインの元宮殿のひとつの敷地にありましたが、身体を鍛える運動のための場所はほとんどありませんでした。
マークによれば、シールズの隊員たちは夜遅くまで戦闘任務に就いたときでも、即席で訓練する方法を何かしら見つけ出します。
いちばん近いトレーニングジムはキャンプ・ビクトリーにありましたが、そこへ行くには装甲車両で戦場を突っ切る必要があり、そのようなリスクも時間も論外でした。
そこでマークは兵営の周囲を5キロほど走り、自重トレーニングに勤しみました。
そのうちに、ヨガをしたくてウズウズしてきましたが、バグダッドでもイラクのどこでも、ヨガ教室が開かれているという話は聞いたことがありませんでした。
そこで、これまで学んできたホット・ヨガ、パワー・ヨガ、アシュタンガ・ヨガを基に自己流でやることに決めました。
兵営の湖の隣に小さなスペースを見つけ、そこに練習場所を設けました。
絵になる場所ではありませんでしたが、砂漠の熱を遮ってくれる木々があり、人目が気にならない程度には兵舎から離れていました。
マークは毎朝、食事を抜いて、その練習場所に避難しました。
様々なヨガのポーズや機能的インターバル・ワークアウト、護身術、呼吸法、視覚化のエクササイズを行いました。
練習を終えると、頭が冴えて心が穏やかになりました。
すでに「身体の動き」と「呼吸」については心得ていたので、その2つを賢く組み合わせることができました。
疲労を回復させたいときには、戦闘のストレスを流し去って疲れを癒してくれるポーズ、呼吸法、視覚化を選びました。
激しい運動がしたいときは、攻撃的なポーズを選んでウォーミングアップし、自重トレーニングのルーティンをしてから、座位のポーズと集中力のトレーニングを行いました。
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このプラクティスは、嵐のような戦場でマークを支える柱になりました。
イラク戦争の真っただ中で平静でいられ、いま・ここに集中でき、エネルギーに溢れ、感情を抑制でき、いつでも任務に就く準備ができていました。
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