
天才が会社を去るとき。シュートの覚悟。
「僕の覚悟」
経営会議を会議室の後ろで聞いていた僕は、その言葉に含まれた意味を考えざるを得なかった。
足が動いた。

会議の後、僕は鹿島修人に声をかけた。
創業期メンバーの特権だろうか?
僕はカジュアルに社長に話しかけることができる。




僕は続けた。

彼は、6秒黙り、こう言った。

え?
僕は耳を疑った。
10年の付き合いの中でも、こんな姿、見たことがない。
そう思えるぐらい、初めて聞く語気の弱さだった。
彼は続けた。

人生のすべてをかけてつくってきた会社を手放すこと。
その断腸の思いは、ビジネスに携わる者なら誰でも理解できる。
彼は言った。



そう言うと、彼の目が一瞬潤んだように見えた。
圧倒的な才能を持ち、自分への確信が揺らいだことのなかったシュートが、初めて自身の才能を疑い始めている。
僕にはそう見えた。
発したい言葉は山ほどあった。
でも、言えなかった。









違う。
僕が今の会社にいるのは、社長がいるからだ。
だから、あなたのいない会社なんて、いる必要がない。
そう言えたら良かった。
でも、僕には伝える勇気がなかった。
僕は下を向いた。


僕はシュートを見た。
できる限り、いつもの表情で言った。

シュートは笑顔に変わり、「よし。」とだけ言い、去った。
シュートのいない会社・・・?
想像できない。
それぐらい僕は、彼の才能に惚れ込んでいたのだ。
次回
【1ー9】シュートとの出会い。