
マラソンのような激しいスポーツをすれば人間として成長できる、という考えには惹かれるものがあります。
特に初めて走ったとき、意志力が強化されるなど、実際にそういう面もあります。
でも、大局的見地に立てば、過剰な有酸素運動は身体に負荷をかけ、結果が出るまでに時間がかかりすぎます。
その点、ハイパフォーマーは効率的に運動しています。
適切なときに、適切な方法で運動すれば、ホルモンの分泌を最適化することができます。
「筋力」を強化して炎症と酸化ストレスを減少させる

チャールズ・ポリキンは、世界的に名高いストレングス&コンディショニングの指導者でありコーチであり、17種ものスポーツで世界最高レベルのアスリートを助け、数百ものメダルと勝利と自己ベストを達成させてきた実力者です。
チャールズは数十年間にわたって、筋肉に送られるシグナルが身体をどのように変えるかを調べてきました。
自分が出した結論について、誰が何を言おうと意に介さない信念の人です。
他の人が気づく何年も前に先を見ることのできるビジョナリーでもあります。
だからこそ多くのプロたちがチャールズのもとにやってきます。
長時間の「有酸素運動」は脳を老化させる

チャールズが到着した結論は、長距離の有酸素運動より筋力トレーニングのほうが脳の健康と総体的なパフォーマンスに良い、ということです。
長距離の有酸素運動は脳の加齢を速めるとも結論づけました。
この見解は一部の人々を激怒させましたが、その正しさを裏付ける最新の医学研究がいくつか発表されています。
2013年、科学者たちがパーキンソン病の患者にはどんな種類の運動が有益かを調べました。
3つの形態の運動について臨床試験を行いました。
それは、低強度トレッドミル運動・高強度トレッドミル運動・ストレッチとウェイトトレーニングを組み合わせた運動です。
臨床試験が開始される前に、有酸素運動は患者の症状を悪化させる可能性がある、とチャールズは研究者たちに警告していましたが、その通りの結果になりました。
チャールズに言わせれば、当然のことが起こっただけでした。
彼が言った通り、ストレッチとウェイトトレーニングの組み合わせを行った患者に最高の効果が現れました。
低強度のウォーキングでも、数名の患者には効果が見られました。
この結果は、パーキンソン病ではない人にも当てはまるのでしょうか??
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チャールズは、当てはまると考えています。
有酸素運動は、特に高血圧の人、肥満体または座っている時間が長い人、内臓脂肪の多い人にとっては当然のメリットがあります。
チャールズはそれを認めたうえで、それでも長期にわたる有酸素トレーニングには、多くの人が気づいていない重要なデメリットがあると指摘します。
酸化ストレスで「加齢現象」が加速してしまう

まず第一に、有酸素トレーニングは、コルチゾール値を上昇させます。
それで炎症が起こり、加齢が加速します。
コルチゾール値が高まると、体内の酸化物質の量が増加します。
この酸化物質が、脳・心臓・消化管・その他の器官の炎症を増大させます。
筋力トレーニングでもコルチゾール値は上昇しますが、その上昇分は、他の有益なホルモンの放出で相殺されます。
でも有酸素運動では、その放出が起こらないのです。
2010年のある研究では、300人以上の持久性運動の選手のコルチゾール値を調べ、非アスリート対照群と比較しました。
その結果として、有酸素運動競技者のコルチゾール値は対照群よりもかなり高く、この値の高さとトレーニング量の多さに明確な相関関係が認められました。
研究者は
「以上のデータは、持久性アスリートが繰り返し行う集中トレーニングや競技のストレスが、長時間にわたる高濃度のコルチゾール曝露と関連があることを示している。」
と、結論づけました。
2011年の研究では、健康で活動的な男子大学生に対する自転車こぎの影響を調べた結果、コルチゾール値と炎症マーカーがかなり増大することがわかりました。
これは、重大な発見でした。
心疾患・癌・糖尿病・アルツハイマー病など、命に関わる病気の多くの根底には慢性の炎症が存在するからです。
結びつきがもっと明確なデメリットは、頭脳の明晰さとエネルギーの低下です。
さらに、有酸素トレーニング中は呼吸数が増して酸素が豊富な体内環境となり、それに反応するかたちで体内に有害なフリーラジカルが生成されます。
このフリーラジカルが酸化ストレスを生み出し、身体のダメージを修復してくれる抗酸化物質を激減させてしまいます。
酸化ストレスは加齢現象の主要因であり、過度の有酸素運動が酸化ストレスを引き起こすというのはすでに定説です。
「筋トレ」を加えれば問題は解決する

チャールズは、有酸素運動を行うときは抗酸化物質とプロバイオティクスのいずれか、または両方のサプリメントを摂取することを推奨しています。
ただ、それよりも、運動のルーティンに単に筋力トレーニングを加えるほうがもっと効果的だ、とも言っています。
筋力トレーニングはタンパク同化ホルモンを放出させ、それが酸化ストレスに抵抗し、筋肉・骨・結合組織を生成し、有酸素運動のダメージを取り除きます。
周知のとおり、筋力トレーニングが骨減少症予防にとても有効なのに対し、有酸素系スポーツは骨のミネラル密度を低下させ、骨減少症の原因になりかねません。
筋肉量と筋力が加齢を防ぐ

1980年代にタフツ大学で、加齢を引き起こす要因を調べた一連の研究が行われました。
その研究で明らかになったのは、加齢の最重要のパラメータは筋肉量。
次に重要なのは筋力、ということでした。
この2つの値は、コレステロール値・血圧・安静時心拍数・最大心拍数などよりも健康的な加齢のために重要であることがわかりました。
現実問題として、筋肉量の減少は30代から始まって、10年ごとに3〜5%が失われていきます。
(※「筋力」は20代から弱くなりはじめ、1年に1〜2%ずつ落ちていきます。)
この退行性の筋肉減少は「サルコペニア」と呼ばれ、ほぼ避けて通れませんが、逆転させることはできます。
動作トレーニングとウェイトトレーニングを組み合わせて筋肉と神経系を刺激することで、加齢プロセスの進行を遅らせながら、失われた筋肉を再建し、筋力を強化し、炎症と酸化ストレスを減少させ、骨を強くすることができます。
次回予告

HACK21▶︎「筋肉」を鍛えれば、賢くなって若返って幸せになる
ー2:週1回、「全速力」で走る