本要約 鍼灸接骨院

【1−2】あいつが語り出す。

あいつが語り出す

僕は深夜の寝屋川を歩いていた。

「あ、雨だ。」

こういう日に限って、ついていない。

誰かが呟いた途端、人だかりは駅に向かって走り出した。

一気に雨脚が強くなり土砂降りになると、周りから誰もいなくなった。

僕は、いつもなら人だかりがある寝屋川駅前広場のパンダ像の前で、ぼんやりと見上げた。

パンダがこっちを見ている。

そんな気がした。

「お前、雨の中、大変だなあ・・・」

ビショビショになったスーツの裾が冷たくなってきた。

パンダ像は雨にも負けず、しっかり前を見つめている。

「パンダか・・・。皆に愛される存在・・・。いっそ、パンダにでもその秘訣を教えて欲しい気分だよ。」

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・・・・・・・?

一瞬、パンダの口角が上がった気がした。

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そんなわけはない。

雨は強くなる。

誰もいない寝屋川で、僕は心の中で叫んだ。

お願いです!!

どうか、僕に力を貸してください!!

鹿島修人を救いたいんです!!

だって彼は、僕が人生で初めて惚れ込んだ「才能」なんです!!

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パンダ像がキラリと光った。

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「その願い、叶えたろか〜?」

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「え・・・・・・!?」

翌朝、目が覚めると、目の前にパンダが座っていた。

「よお。」

え?

え?

パンダが言葉を話している・・・。

見た目はパンダ像そのもの。

どう見ても、パンダだ。

でも、パンダが話しをしている。

「よお。」

僕は自分の目と耳を5度疑った。

僕はひと通り疑い終わると、こう言った。

「だ、だ、誰なんですか?」

「パンダや!!」

「あ、それは見たらわかりますが、なんで喋ってるんですか?」

「喋るパンダやからや。」

「いや、あの、そういうことじゃなくて・・・」

「ほななんや?」

「何者なんですか、その。あなた様は?」

なぜか敬語が出た。

「ワシか?」

「はい」

「CPOや。」

CPO?

最高経営責任者(CEO)のようなものだろうか。

僕はとにかく得体の知れないものを見ている感覚だった。

「CPO・・・・・・なんですか、それ?」

「チーフ・パンダ・オフィサー」

「ち、ち・・・・・・・・?」

「チーフ・パンダ・オフィサーって・・・」

「・・・・・か、帰ります。」

「帰るて、ここ自分の家やんけ。」

「あ、じゃあ、会社行きます。」

「待て待て待て。嘘やん。嘘。ジョークやんか。お前ほんま、わかってない。関西人ちゃうやろ。ほんまはな、ワシはCTOや、CTO。」

CTO?

最高技術責任者・・・・

パンダなのに?

僕はパンダの足を見た。

丸っこくプリンとしている。

この足でエンジニアリングなんて、できるわけない・・・。

とほほ、パンダにまで、からかわれている。

その気持ちを見抜いたのか、目の前のパンダはニヤリとした。

「違う、TはタレントのTや。すべての才能を司る者、チーフ・タレント・オフィサーや!!才能を知り尽くし、全生物の頂点に立つ男やで!!」

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CTO:Chief Talent Officer

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「・・・は、はあ?」

「お前、昨日こう言うたな『パンダに秘訣を教えて欲しい』って、ほな、クイズを出そう。ワシら『パンダの才能』はなんやと思う?」

「パンダの才能!?」

「せや。だって不思議やん。パンダなんて、ほとんど役に立てへん。むしろ、餌代えげつないし、糞尿も撒き散らす。せやけど、人間はメロメロや。なんもせんでも餌をくれる。お金も時間も使ってくれる。それは例えるなら、タレントちゃうか?」

パンダがタレント・・・?

考えたことがなかった。

でも確かに、パンダほど世話がかかる、でも、人を魅了している動物は少ない。

「まあ、言われてみたら・・・」

「せやで!!ええか。なんでパンダが人を魅了するのか。それは3つの要素があるからや。何かわかるか?ここから才能を理解する一歩が始まる。」

「パンダが愛される理由・・・・?可愛いからですか?」

「あー、アホや。アホ。脊髄で喋ってるやろ、じぶん?可愛いだけの動物なんて腐るほどおるわ。」

「た、たしかに・・・」

「結論言うとな、パンダが愛される要素は3つあるんや。それは、ちっちゃくて、丸くて、ちょっとバカなとこなんや。」

「小さくて、丸くて、ちょっとバカ?」

「せや。この世の愛されているキャラクターは全部そうや。赤ん坊はどうや?」

「たしかに、小さくて・・・丸いし、ちょっとバカです。」

「せやろ。くまモンは?キティちゃんもそうやろ。全部小さくて丸くてちょっとバカやろ。」

「たしかに・・・・はい。」

「人は、完璧やから愛されるんちゃう。むしろ逆や。弱点をさらけ出すからこそ愛されるんや。ワシらパンダ界もそうや。」

「ええか、学歴が良くて仕事のできる人間ほど、よーく勘違いする。強みで愛されるってな、せやけどな、真実はむしろ逆や。弱みがあるからこそ人は愛されるんや。つまり、パンダの才能は『愛される余白』や。」

「愛される余白・・・?」

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たしかに、思い当たる節があった。

まさに、鹿島修人だった。

彼は完璧じゃない。

できないこともたくさんある。

でも、それこそが彼の魅力だった。

助けたくなるのだ。

だけど、それが才能となにか関係があるのだろうか?

「は、はあ・・・それは理解します。でも、さっきから何の話しをしているのか、よくわからないのですが。」

「自分の心に聞いてみいや、それ。」

「僕の心?」

「昨晩、悩んでいることがあったから、ワシに相談してきたんちゃうん?」

僕は昨晩を思い出した。

酔っ払った勢いだった。

でも、悩んでいることがあった。

「たしかに。そうなんです。仕事で『悔しい』と思うことがあって・・・」

「人間が抱えるほとんどの悩みは一緒や。それは『自分のコントロールできないことを、無理やりコントロールすること』から生まれている。」

「コントロールできないもの?」

「例えば、仕事で部下が言うことを聞かないとか、な。でも他人なんてそもそもコントロールでけへん。あるいは、相手の気持ちを疎かにして、無理やり話を進めようとする。自分の外見や家柄を理由に、できない理由を語る。悩みの根っこは、実はぜーんぶ同じやで?」

同じ?

そうなのだろうか?

パンダは続けた。

「すべて『自分のコントロールできないこと』を、無理やりコントロールしようとしている。いわゆる、パンダを池に連れていくことはできても、水を飲ますことはできないってやつや。」

「馬では・・・?」

小声で反論しつつも、僕は思い返していた。

「もっと自分はできるはず」

「なんでこうなったのだろうか?」

そう思うとき、僕は自分がコントロールできないものを動かそうとしているのかもしれない。

パンダは続ける。

「じゃじゃーん。ほな、ここでクイズな。人間が一番コントロールしたがるけど、一番の悩みのもとになるもんはなんや?」

「うーん、他人・・・ですか?」

「他人は2番目や。あのな、1番は、『自分の才能』や。言い換えれば『ないものねだり』をすることや。つまり、人がいちばん思い悩む根本は、『自分の才能をコントロールしようとしたとき』なんや。思い当たる節ないか?」

思い当たる節はたくさんあった。

小さい頃からずっとそうだった。

「もっとカッコよく生まれたら」

「もっとお金持ちに生まれたら」

「もっと器用だったら」

「もっと賢かったら」

「あと5cmだけ背が高ければ」

何度となく繰り返してきた悩みだった。

「せやけどな、悲観することはないで。それは自分の才能に気づいてないだけやからな。」

「自分の才能?」

「まず、そもそもやな。人の才能は3種類ある。お前は、自分がどれに近い人間やと思う?」

  1. 独創的な考え方や着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人
  2. 理論的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人
  3. 感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人

「な、なんですか、これは?」

「つべこべ言わず、選ばんかい。」

「うーん・・・3つ目ですかね。空気を読むのは得意だと思います。」

「あー、ほんなら、お前は凡人タイプやな、凡人。」

「ぼ、凡人?」

『共感性』を軸に物事を動かす人間ちゅうことや。ええか。これは順番に、創造性・再現性・共感性の3つの才能を表している。それぞれを順番に天才・秀才・凡人と分類しとこ。あんちゃんは凡人や。」

普通なら、怒るのかもしれない。

でも、僕は怒る気にならなかった。

なぜなら、誰よりも自分自身がまさに凡人であることを痛感していたからだ。

凡人・・・ですか?」

「せや。」

「たしかに・・・この3つなら、正直、僕は凡人かもしれません。でも、だからこそ悩みもあります。」

僕は、正直な気持ちを伝えた。

「やっぱり・・・心の底では天才に憧れる自分がいます。」

天才への憧れな、まあ、気持ちはわからんでもない。でもな、天才って、そんなええもんちゃうで?天才は変革の途中で凡人に殺されることがあるからな。」

凡人天才を殺すことがある・・・??」

「せや。」

次回

【1ー3】凡人が天才を殺す理由。

-本要約, 鍼灸接骨院

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